テレホン法話へ

平成20年1月1日     

はい、長念寺テレホン法話です。
 あけましておめでとうございます。今年も長念寺テレホン法話をよろしくお願い申し上げます。
 昨年の世相を表わした漢字は、「偽」だったそうです。日本漢字能力検定協会が全国から公募した結果選ばれたのがこの漢字です。耐震偽装問題、次々明るみになった偽装食品の問題、年金問題、政治家の政治活動費問題など、偽装、嘘、偽りに満ちた年だったと言うことなのでしょう。
 偽という字は、「にんべん」に「為す」と書きます。「人が為す」と読みますと、「人間がやったこと」ということになります。自然ではなく偽物ということでしょうか。ただし偽物がすべて悪とは限りません。人為的なものにだって、便利なものや美しいものはいっぱいあります。公園のベンチ、丸太で作ってあると思って近づいたらコンクリート製であることも。でも腹は立ちません。偽装問題のように、嘘をついて、個人または組織が有利になるように操作したことが分かる場合、腹が立ちます。
 また、偽という字は、「人の為め」とも分解することができます。そう思ってみるとなかなかこの字は辛辣です。「国民のため」と常に発言している人たちから偽装が発覚したのです。でも、ひとのためと理由づけながら自分が有利になるように行動しているのが人間の本質なんだとも思います。名誉欲というやっかいな欲望は、その最たるものです。
 人間誰もが持つ煩悩を思う時、「偽という字はひとのためと書くのだ」との言葉からは、皮肉と言うよりも、人間を洞察する深い思いを共感することができます。
 今年は、どのような年になるのでしょうか。
 偽りが横行する社会であることには変わらないのかもしれません。昨年末、宗教まがいの詐欺的な霊感商法に警察官がかかわっていたとの報道がありました。人の心をかき乱しておいて金銭を搾取する反社会的な宗教が、いまだに横行していることが明らかになりました。
 真実の宗教は、不安や迷いからの解放を導くものです。そのことをひとつを知ればこのような偽りの宗教に騙されることはないのです。
 人間の心の現実を深く洞察していくのが仏教です。ひとという存在のもろさ、弱さを認めていくなかで、力むことなく強い芯の通った生き方を示してくださっているのが親鸞聖人の浄土真宗のみ教えであります。
 仏教のみ教えに、より多くの人々が親しむ年になることを望みます。
 次の法話テープの交換は1月16日です。