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平成21年10月1日から

伝わらない時代
 はい、長念寺テレホン法話です。
 以前には、家庭において浄土真宗の信心や習慣など、親から子に自然に伝えられていくものと信じられていました。しかし、10数年前、総代会のおりにある総代さんが、「社会習慣など周りが本気で教えないと伝わらない時代になってきている。お寺のことや浄土真宗のことを後継者にきちんと伝えることを考えなければいけないなあ」と言われ、それをきっかけに、毎年報恩講の最後に、世代交代をされた方を対象に「入門式」を行うことにいたしました。
 入門式の内容は、住職が浄土真宗の基本を話し、総代さんが長念寺についてお話ししています。一年ごとですから対象となる方は少数ですが、最近では出席率もよく「参加してよかった」という声も多く聞かれます。
 親から子へ自然に伝えられていったものが、最近では社会環境の変化により、すでに努力をしないと伝わらない時代になっています。細々とした活動ではありますが、とてもよい行事を始めさせていただいたと思っています。
 前回、最近「絆」という言葉をよく聞くが、それは「絆」への憧れというよりも現実社会で「絆」が失われてしまったことへの不安の現れではないかとお話しいたしました。現実は私たちの想像以上にとても厳しい状況になっているのだと思います。
 住職の会合で、このようなお話をうかがいました。
 大変熱心なご門徒が、あるときからパッタリと姿を見せなくなってしまい皆で心配していました。しばらくするとそのご家族から、すでに亡くなられていて葬儀も済んでいるとの連絡が入ったとのことです。息子さん家族は遠方に住んでいてそちらで葬儀をしていたのです。
 亡くなられたお父様と息子さん家族は、全く別の所帯を持っていたため、お父様の生活習慣や環境などは全く知らないのですからやむを得ないといえばそうなのですが、残念な思いが残ったとのことです。息子さんを攻めるのは酷なことかもしれませんが、葬儀が遺族の都合で営まれてしまい、個人の生前のおつきあいや生活環境は全く無視されてしまったということになります。
 このお話は、決して極端な例ではないと思われます。「絆」という言葉がはやっているのは現実に対する皮肉にも似た現象なのかもしれません。場合によっては同じ家の中に住んでいても絆が破綻しているかもしれません。
 各個人がささやかな動きでも始めない限り、この現象をくい止めることはできないのではないかと、強い危機感を覚えます。
 次の法話テープの交換は10月16日です。