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平成22年4月16日〜

現世利益和讃
 はい、長念寺テレホン法話です。
 神仏に願い事をすることは、現代人でもよくあることではないかと思います。将来において良い結果が出ることを望んだり、今の幸せが長く続いてほしいときに願い事をすることが多いのではないかと思います。しかし、一歩下がって考えますと身勝手な都合のよい話ではあります。
 親鸞聖人のご和讃の中に、『現世利益和讃』と名付けられた和讃が15首あります。そのうちの一首には、
  南無阿弥陀仏をとなふれば  この世の利益きはもなし
  流転輪廻のつみきえて    定業中夭のぞこりぬ
とあります。その意味は、
 「南無阿弥陀仏のお念仏を称えれば、この世における利益は限りがありません。今まで生まれかわり死にかわりしてきた中で積み重ねてきた罪が消え、早死になどの定まっている寿命も取り除かれます」
ということです。
 浄土真宗では、現世の利益を追求することを否定しています。まして、お念仏は呪文ではないと聞いています。ところが、このご和讃を読むと、親鸞聖人が、お念仏は現世利益のための呪文であると説かれているようにも思えてきます。
 親鸞聖人は、絶対他力のお念仏について、「南無阿弥陀仏とお念仏を称えることも自分の力で称えているのではなく、あくまでも如来さまから賜ったお念仏である」と説かれています。そのことを踏まえて、このご和讃の「南無阿弥陀仏をとなふれば」という部分を解釈しますと、「お念仏のみ教えを信じ、阿弥陀さまのお慈悲の中に生かされて、お念仏する私たちにとりましては」となります。したがいまして、お念仏を呪文と考えることはここではできないのです。
 私たち凡夫は、未来のことを事前に知ることはできません。いつも不安を抱えて生きています。そのような弱い部分に入り込みやすいのが現世の利益を説く宗教です。また日の良し悪しを選んだり、方角を気にしたり、うらないまじないを信ずるひとも、八百年前も現在も変わらずに存在します。
 お念仏の中に生かされていながら、不安にこころがぐらつくのが凡夫の常であります。そのようなひとびとのために、親鸞聖人は、『現世利益和讃』を説かれたのです。つまらないことにこころをぐらつかせ、人生を踏み誤ることがないように、お念仏という大きなお慈悲の中で、自分の歩むべき道を一歩一歩しっかりと踏みしめて進みましょうと語りかけておられるのです。『現世利益和讃』は、まさに、人生の応援歌であるということができるのです。
 次の法話テープの交換は5月1日です。