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平成23年4月1日から

心遣い
 はい、長念寺テレホン法話です。
 大震災の爪痕は深く、警察庁によると、31日午前10時現在の死者数は1万1417人、行方不明はまだ1万6273人もいらっしゃるとのことです。被災地も広範囲に渡り、未曾有の大災害であったことを物語っています。
 被災地では、20日を経た現在も必死に救援活動が行われています。消防や医療、自衛隊など専門技術を必要とする活動がいつ終わるともしれません。被災者の方々も、災害の事実を受け入れた上で、徐々に復興への歩みをはじめようとしています。福島第1原子力発電所の津波被災による事故が復興への足かせにならないことを願ってやみません。
 まったく桜の花に心が向かないうちに、4月になってしまいます。今年は、お花見を中止にしているところが多いと聞きます。被災地が苦しんでいるのに酒盛りなどできないということだそうです。何もかも自粛するのはどうかと思いますが、その気になれないことを無理にすることもありません。しかし、日本には酒を飲んで死者を弔う習慣もある、やめる必要はないのではないかという意見もあります。被災地でないところまで元気がなくなってしまったら経済が回らなくなり、かえって被災地のためにならないという考えです。福島産など被災地域の酒を消費することによって元気を送ろうとの意見もあるとのことです。それぞれみんな一理あります。
 震災後、ACジャパンの広告が頻繁に流れています。暗唱できるような広告もいくつもあります。その中で、「思いは見えないけれど、思いやりは見える。こころは見えないけれど、こころ遣いは誰にでもわかる」というコマーシャルがあります。とても良い感動的なコマーシャルのひとつです。しかし、ひとの行為は、そんなに単純ではありません。私たちは、相手に分からないように気配りをすることを美徳としてきました。思いやりもこころ遣いも、私たちには、見えないことがいっぱいあるのではないかと思います。
 今社会で、祝い事などを自粛する動きがあります。会場が被災していたり計画停電の区域になったりなど物理的な事情で開催できないこともあります。また、関係者が被災して開催する気持ちになれない場合もあります。しかし、他人の目を気にしての自粛なら、意味がないような気がしてなりません。少なくとも私たちは、ひとの自粛するしないの判断に対して批判するようなことをしてはならないと思います。どのような心配りがなされているか私たちには分からない場合が多いのですから……。
 私たちにとって、今最も大切なことは、被災地に常に心を向けながら、通常通りの生活をすることなのだと思います。
 次の法話テープの交換は4月16日です。