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平成23年10月1日〜

台風15号
 はい、長念寺テレホン法話です。
 9月21日に静岡県に上陸した台風15号、関東地方でも近年にない暴風雨をもたらしました。東日本大震災をはじめとして今年ほど災害の多い年はないような気がいたします。こと台風に関しましては、近年、予報では大荒れになるから充分に警戒するようにとの情報がありましても、結果的には台風のコースがそれたり関東地方に近づくと台風の勢力が衰えるなど、ほとんど影響がなかったので、少々甘く見ていたこともあったのではないかと思います。
 当日首都圏では帰宅難民があふれました。この光景は今年2度目です。1度目は3月11日東日本大震災のときです。交通網がマヒし多くの人々が帰宅の足を奪われました。その都心の混乱の様子は全国にニュースで流されました。
 しかし、ニュースで取り上げられることはありませんでしたが、その混乱の中で幼いこどもたちが心を震わせていたことに気づいている人がどれだけいたでしょうか。私の寺に併設する保育園では、3月11日には多くの保護者がこどもを迎えに来ることができず、最終的には、翌朝の4時過ぎに最後のこどもの迎えがありました。そして、今回も多くの園児が閉園時間を過ぎ風雨が治まっても残り、最終的には夜10時半になってしまいました。当然のことながら職員も残らなければなりません。
 保育園はまだ良い方です。こどもたちを手厚く見ていてくれる先生がいるのですから。震災後に私たちの地区で話題になったことがあります。小学校は地震が治まって早々に児童を帰宅させました。鍵っ子のこどもたちの中には余震が続く中、一人で過ごしていたこどもたちがいたのです。そして今回は、台風が襲来することを予知して小学校は昼食後荒れないうちにこどもをすべて帰宅させました。結果は目に見えています。
 こどもを非常時に一人にしないこと、また保育園への迎えは親の責任ということで済ますことができるのでしょうか。台風はある程度予知が可能です。朝の段階で、親が対応を考えておくべきであったとも考えることができます。ただ、今回は勤め先によって対応がまちまちだったのです。中でも、小さなこどもを持つ雇用者に配慮のできた会社は、適切な対応ができているのです。
 能力主義が歪な形で蔓延している現代社会では、休みを取りにくくなっています。保育時間の延長などの対策で働く親を護ることについては、政治や行政は意識して動いています。しかし、直接意見を言うことができないこどもが置き去りにされているのではないか心配です。私たちの社会が見失っているものはごく身近なところにあるのかもしれません。
 次の法話テープの交換は10月16日です。