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平成23年12月16日

自然の節理
 はい、長念寺テレホン法話です。
 師走も半ば、いよいよ寒くなってまいりました。今年は、秋が遅く、境内の紅葉がいつになく遅れました。例年ですと報恩講までにイチョウの葉がすべて落ち、真っ赤に染まったモミジの葉がわずかに秋の名残をとどめているのですが、今年は、報恩講の当日、黄色いイチョウの葉が大量に落ち始め、庭を埋めました。そして、モミジは、台風15号の潮風の影響でチリチリになってしまった葉を錆色に染めていました。
 今年は、3月11日に勃発した東日本大震災により大きく社会が変化しました。被災地を常に意識しながらの生活になりました。そのような中で、本山では親鸞聖人750回大遠忌法要がお勤まりになり多くの人々が参拝いたしました。大震災の年に節目の法要をお迎えしたのも不思議なご縁ではないかと思います。親鸞聖人も、幼いときから、戦乱や大飢饉や地震や大火など、多くの人々が犠牲になる大きな災害を目の当たりにして成長されています。
 どのような災害がありましても、日常は必ずめぐってまいります。私たちにとりまして、その日常の中、どのように心を保っていけるか、とても重要なことであります。原発の事故が、被災地の方々や私たちの身体を蝕んでいるのかどうかはわかりません。何事もないことを願うしかありません。しかし、それ以前に、すでに私たちの心を蝕んでいるように思えてなりません。放射性セシウムの値がどうこうということに、否が応でも振り回されることにより、いつの間にか心の平衡感覚が狂いつつあるのではないかと不安になることがあります。
 しかし、そのような中にあっても、自然の節理は季節に応じていつも通り進んでいっています。寒い冬がやってきました。夏には強い陽ざしを遮ってくれた広葉樹の葉は落ち、陽のぬくもりをいつも通りに、私たちに与えてくれます。親鸞聖人は、このような自然の営みを享受していることに感動しながら、そこから、阿弥陀さまの大きなお慈悲に思いを馳せておられたのではないでしょうか。「私の計らいなどなにもいらない、阿弥陀さまの方から私たちに、そのお慈悲は至り届いてくださっています」と。
 いつの間にか私たちは、人工的な放射能や、ダイオキシンなどに気をとられ、自然の恵にまで目を向けることができないようになってしまっているのではないでしょうか。反省しなければなりません。
 次の法話テープの交換は1月1日です。