平成24年12月1日

法話HPへ
獅子身中の虫
 はい、長念寺テレホン法話です。
 親鸞聖人の晩年、関東でお念仏集団の中で混乱が生じます。聖人がよかれと
思って関東に聖人の名代として送った長男の慈信房善鸞が、混乱の原因となっ
てしまった事件です。関東から届く善鸞さんからのお手紙によって、関東のお
弟子たちの多くが阿弥陀さまがどんな悪人でも救うからと言い、気ままに好き
勝手に悪行(ひがごと)するものが多くいるとの情報が伝えられます。そこに
は、親鸞聖人が信頼するお弟子たちの名前も書かれていたのです。親鸞聖人御
消息の第28通には、その善鸞さんのお手紙に対する返事が書かれています。
 そのお手紙から、信頼してきた人々のお念仏が、真実のあり方からはずれて
いってしまったことに、聖人が、大変なショックを受けていることが伝わって
きます。そして、そのことばの端はしに、信心をしっかりといただいたと思わ
れる人だったのに本当なのだろうかとの疑問が窺える内容になっています。
 善鸞さんは、信願坊がその中心的な役割を担い、その周辺にはそのせいかも
のに狂って死ぬ人が多いことも伝えているようです。その報告に対して、聖人
は2つの点で誤りを指摘しています。まず、人の死のありようによって評価す
ることは誤りであり、病をもって往生が左右されることはないことを示し、次
に、罪は誤りを吹聴する仏法を傷つけるものにのみあるのであって、その周辺
にいる人にまで及ぶことはないと示しています。
 80代半ばの高齢にも関わらず、明晰な判断をなさっておられます。信心を
いただいた人が痴呆症になっても、それは生身の人間として得た病であるか
ら、阿弥陀さまのお救いからはずれるようなことはないと断言されています。
現代の私たちにもとても分かりやすいありがたいお言葉です。阿弥陀さまの大
きな包容力をとても分かりやすく示してくださっています。
 そして、追伸部分では、善鸞さんが、間違った教えを説いている人だと伝え
た方々名をあげ、不憫でありこの手紙を読み聞かせてほしいと伝えています。
とくに性信坊については、この春京都に来られ会っているのだから分かってく
れるだろうと期待しています。
 領家・地頭・名主にそそのかされたのではとの指摘に対しては、領家・地頭
・名主が仏法に関して百姓をそそのかすようなことはないと断言し、仏法を破
る人は仏法者であり、獅子身中の虫のようなものであるだろうとしています。
 80代にしてこれだけ明晰な方である親鸞聖人が、この手紙のあとまもな
く、獅子身中の虫がまさに我が子であったことを知ることになります。その悲
しみはいかばかりであったでしょうか。想像に難くはありません。
 次の法話テープの交換は、12月16日です。