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平成25年8月1日~

空飛ぶ広報室
 はい、長念寺テレホン法話です。
 今人気の小説家に、有川浩さんという女流作家がいます。『図書館戦争』『空飛ぶ広報室』『県庁おもてなし課』などの著作があり、映画やテレビドラマにもなっています。
 私も息子たちに勧められて、『空飛ぶ広報室』と『県庁おもてなし課』を読みました。テレビドラマの『空飛ぶ広報室』は、娘たちが夢中になって見ていました。
 筋書きは、頭でっかちで仕事が空回りしてしまっている女性のテレビディレクターが、自衛隊の空爆広報室の担当となり、ぎくしゃくした対応を繰り返しながら自衛隊の仕事を理解していくというお話です。
 人殺しの道具を使って、人殺しの訓練をするのが自衛隊であるとの固定観念をもって取材に臨むディレクター。それに対し、憲法で規定されている専守防衛の立場で訓練を続けている自衛隊。広報室は、その仕事を広く人々に理解してもらうために努力をしている部局です。ところが、その女性ディレクターが持っているような自衛隊に対する先入観があるために、広報の仕事は苦難の連続となります。
 私たちは、東日本大震災を経て、自衛隊に対するイメージが変わりました。自衛隊の災害出動により初期の救助活動や復興活動が飛躍的に進んだことを誰もが記憶しているからです。
 テレビドラマは、主役が今をときめく新垣結衣と綾野剛、脇役もそうそうたる俳優で固め、自衛隊といういかにも固い素材であるにもかかわらず、人間味溢れるものになっていました。
 このドラマが、参議院選挙前に放映されていたのは何か意図があったのかななどと思うようなタイムリーなものでした。日本国憲法で規定された自衛隊が社会に認知されたといっても良いようなドラマだったからです。
 戦後にあって、中国、韓国、北朝鮮と、今日ほどギクシャクしているときはあったのでしょうか。双方の国民感情を巻き込んでの現在の状況は、関係当事国が外向的に打開する方法を真剣に協議しなければならない状況にまで追い込まれているような気がします。こんな雰囲気の中で、自衛隊を軍隊にして集団的自衛権の行使ができるようにするということはどういうことなのでしょう。今の時代、国が武力で相手をねじ伏せることなどできっこありません。威勢のよい言葉はもう沢山です。軟弱外交や自虐外交と批判されようが国民のいのちを守ることを第一に行動する政治家が現れることを期待したいと思います。
 こんなことを考えるのは、対立する国民感情に私自身も揺り動かされていると感じることがあるからです。
 次の法話テープの交換は8月16日です。