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平成25年10月1日~

本堂彩色の修復跡
 はい、長念寺テレホン法話です。
 長念寺では、現在、平成の大改修事業が着々と進められています。長念寺は、本堂と庫裏と山門が川崎市の重要歴史記念物に指定されています。そのうち、本堂と庫裏がこの度の改修事業の対象となります。文化財ですから保存修理という基本方針で改修が進められます。
 改修にあたり、事前にさまざまな調査が入ります。その中で、新しい発見もあります。本堂外陣正面の丸柱の上部や虹梁・組物などに彩色が施されています。その彩色は建築当初のものであることがわかりました。私は、前住職から、前々住職の海善さんが、晩年はしごをかけて彩色を施したことを聞いていました。高齢でありましたので、前住職は、危ないから止すように言っていたのにも関わらずやってしまったとのことでありました。
 今になって、海善さんが老骨に鞭打っても補修をしなければならなかったその理由がはっきりわかりました。
 大正12年に発生した関東大震災により、長念寺本堂も大きな影響を受けました。当時の記録には本堂は半壊したと書かれています。何本かの柱が礎石からはずれてしまったとのことであります。震災直後に門信徒の力で復旧はしたとのことですが、寄せ棟造り茅葺きの屋根からは大量の雨漏りがあった形跡が残っています。中でも、外陣正面の彩色の被害は大きく、住職としては、見るに忍びなかったのに違いありません。補修した部分は、画家として雅号を持つ身ではありましたが、足場の悪い状況でとりあえず応急措置を施したということであったのだと思います。
 今後、教育委員会との調整の中でどのような修復がなされるのかとても気になるところであり、楽しみとなるところでもあります。
 現役の建物として、その時々の人々の思いを積み重ねて、文化が営々と受け継がれてきています。私たちは、その流れを大切にしていかなければなりません。ただ、それをするためには、多大な労力も必要なのだと痛感しています。今回の事業では、大変多くのみなさまの物心ともなるご協力をいただいています。それは、聞法の道場として、門信徒のみなさまが寄り合う場であり、親しまれているからこそであると思います。感謝に絶えません。
 これから事業が進行していく中で、折々に状況報告をさせていただくことも、長念寺テレホン法話の役割であると思います。よろしくお願い申し上げます。
 次の法話テープの交換は10月16日です。